興味津々、TOEIC 990点の世界

スコア別の対策法をそれぞれ書くと膨大になってしまいますので、ここではよく尋ねられる「TOEIC 990点獲得」に焦点を絞ってお伝えします。

*スコア別の勉強法については、2012年に刊行された語学書『厳選ドリル VOL.2 TOEIC(R)TEST』(リスニング編・Part 5&6 編・Part 7 編/出版社:スリーエーネットワーク)の3冊に勉強法コラムを寄稿させていただきました。もしよろしければ、こちらをご覧くださいね。
以前、Twitter でフォローしてくださった方から、「どんなふうに TOEIC 990点を獲得したのですか?」というご質問がありました。当時「実力がつけば奇をてらった対策はしなくても、TOEIC 990点獲得は可能。スコアはあとからついてくる。英語の基礎力をつけることが何よりも大切」という内容でブログ記事としてお答えしたのですが、ここでも改めて加筆修正の上まとめておきます。

TOEIC 990点を獲得したときの試験の感触

私が TOEIC 990点を獲得したのは、2010年11月28日の試験でした。まず、試験本番がどんな感触だったのか、ご紹介します。

リスニング・セクション
基本的に、流れてくる英文内容は全部理解できている状態でした。ただし、リスニング・セクションはかなりの長丁場なので、最初から最初までずっと緊張感を保つのは得策ではないと感じました。私の場合、リスニング試験中、ずっと緊張感を保ち「前のめり状態」でいると、ふとしたときに緊張の糸が切れそうになる経験がありました。11月の試験の際には、前のめりになり過ぎず、淡々と・・・「泰然自若」とした状態で受験できたと思います。

リスニング・セクションはパートごとに特色があります。Part 1 と Part 2 は、受験者を「ひっかけ」ようとしている工夫(例:音の似ている単語を選択肢に入れておく)が随所に伺えるパートです。対照的に Part 3 と Part 4 は「ひっかけ問題」は影をひそめ、標準的なリスニング問題に近いと思いました。後半2つのパートでは、「設問を先に読んでおくこと」が一番効果的な戦術で、これ以外に特別に心がけたことはなかったです。

個人的には、長めの英文が流れる Part 3(対話)と Part 4(説明文)のほうが、英文の背景がしっかり伝わってくるので、落ち着いて解けました。反対に Part 1 は選択肢の英文が極めて短く、1文で写真を判断しなくてはいけないので、「どこも聞き逃せない!」という緊張感がありました。

リーディング・セクション
問題を Part 5 → Part 6 → Part 7 と順番通りに解いていき、最後の問題が解き終わった時点で、15分くらい時間が余っていました。ただし、もし TOEIC の問題が母語の日本語だったら・・・と想像すると、30分以上時間が余ると思います。英文は語順通り、前からドンドン読んでいく(=返り読みをしない)習慣は身についているのですが、まだまだ日本語を読むスピードでは英文を読めていないんだなあ・・・と実感したものです。

私がリーディング・セクションの長文問題を解くときに唯一気をつけたことは、リスニング・セクションとも共通しますが、「設問を先に読む」ことです。この方法は高校・大学受験のときに多くの方が身につけている、王道の戦術だと思います。私の場合も、これ以外の特別な戦術はないです。

リーディング・セクション全体を見渡すと、問題文・設問の中で知らない単語が1~2個出てくることがありましたが、そうした問題は消去法で対処できました。TOEIC の試験本番中、知らない単語・表現が出てくると、「へえ、こういう表現があるんだ」と感心し、本番の試験自体も英語の勉強になるものだと思いました。試験が終了し、帰途につく道すがら、知らなかった単語・表現をノートにメモしておきました。TOEIC の受験料は高めなので、スコア結果だけに満足するだけでなく、試験中にも何か新しいことを吸収したいですよね。

TOEIC 990点獲得に特別な対策は必要だろうか?

個人的には、「実力がつけば、スコアはあとからついてくる」「英語の底力&総合力が養えていれば、問題形式に慣れるだけで990点は獲得できる」と考えています。私自身、TOEIC を「一番の目的」として英語を勉強したことがこれまでありませんでした。問題形式に慣れるために問題集は活用しましたが、いろいろな種類の本を何冊も買いこんで解いたわけではありません。

どうしても短期間で目標スコアを達成しなければいけない方(例:勤務先に規定の TOEIC スコアを提出しなければいけない会社員)は公式問題集を中心に徹底的に対策することが求められますが、私の場合はそうではありませんでした。

大学卒業後入社した出版社では、英語学習誌の取材記者&編集者をしてきましたが、「TOEIC スコアアップ法に躍起になるよりも、英語の底力を養う記事をお届けするほうが長い目で見れば、読者の皆さんのお役に立つ」という思いが編集部の共通認識としてあり、私もそれに共感していました。在職中に TOEIC 関連の語学書をプロデュースしたときも、その思いは変わらず、TOEIC を超えて役立つ本 ― 別の言葉で表現すると、TOEIC はあくまでも通過点で、「TOEIC 卒業後」も役立つ本作りを心がけました。

英語の土台作りに役立った英語教材

TOEIC に関しては特別な対策はしなかったと申し上げましたが、英語の土台作りには多大な時間を使ってきました。

私が英語に初めて出合ったのは、地元の公立中学に入学したときです。中1の授業で、ABC のつづり方から英語を学び始めました。現在英語の勉強を頑張っている方には、私と同じように中学1年生のときに英語に出合った方が多いと推察します。そこで、英語の土台作りに役立ち、かつ、TOEIC 990点を獲得する基礎力となってくれた英語教材をご参考までにご紹介します。

役立った英語教材≪リスニング・セクション向け≫

NHKのラジオ講座「ラジオ英会話」「やさしいビジネス英語」

(*後者の番組は、現在「実践ビジネス英語」という名称になっています)

もともとは大学受験の英語リスニング準備で聞き始めたラジオ講座ですが、内容がとても面白く、「受験」という枠を超えて、夢中で聴いていた番組です。最初は「ラジオ英会話」を聞き、途中から「やさしいビジネス英語」も加えて、毎晩10時20分から11時までラジオに耳を傾けました。週末の再放送も聴き、さらにカセットテープ(*当時はテープが主流でした)に講座を録音して、通学の電車の中でも、また、大学受験当日のお昼休みにも聴いていました。

私はもともと学校の定期試験レベルのリスニング問題もわからないほど、英語を聞き取る力がありませんでした。でも、この二つの講座を1年以上毎晩聴き続けた結果、受験レベルを超えたリスニング力が養えただけでなく、社会人になって英語で仕事をする上でも基礎になってくれました。

私がリスニングに関して今でも一番感謝しているのは、これら2つの番組です。当時のテキストは、「ラジオ英会話」が350円、「やさしいビジネス英語」が370円で、私にも無理なく買える価格でした。ラジオ講座を通じて、「お金があまりなくても、語学の勉強はできる」と実感しました。
YouTube
私の場合、YouTube で英語の動画を繰り返し見続けた結果、2008年の時点で TOEIC のリスニング・セクションでは特別な対策をしなくても、すでに満点を獲得できていました。これはもちろん、NHKラジオ講座を毎晩聴き続けて身につけた、基礎力の土台があればこそだと思います。YouTube 活用法については、英語勉強法コーナーの「YouTube×英語」で詳しくご紹介しています。

最近注目している動画サイトは、TED です。世界第一線の知性に英語で触れることができます。TED は字幕機能も充実しているので、聞き取れない箇所は英語字幕で確認することも可能です。基礎力の土台の上に、YouTube や TED などを活用し、生きた英語に接するスキマ時間を毎日確保すれば、TOEIC のリスニング問題は、だんだんと平易に感じると思います。

役立った英語教材≪リーディング・セクション向け≫

TOEIC はビジネス英語に特化した試験とはいえ、大学受験レベルの語彙力は前提として必須だと思います。私が基本的な語彙力をつけるためにボロボロになるまで使い込んだ単語集が、『速読英単語(必修編)』(Z会)でした。英文の中で単語を覚えるというコンセプトが気に入って選んだ単語集です。この単語集に出てくる単語は全部覚えただけでなく、英文を繰り返し音読していました。さらに、自分で調べた派生語などをドンドン書き込んでいき、自分オリジナルの1冊に仕上げました。
コンパクトなサイズでかばんにも入るので、通学の途中、電車の待ち時間が1~2分だけでも、駅のプラットフォームでこの本を取り出して単語を眺めていました。基本的な語彙力が身についたのは、この単語集のおかげと感謝しています。その後は、英語の本や新聞記事などを読むなかで、語彙力を養ってきました。

単語集は自分と相性の良い1冊を探し出し、ボロボロになるまで繰り返すのが一番だと実感しています。私の場合は、『速読英単語』との相性が良かったのですが、ほかにも、『DUO 3.0』(アイシーピー)という名著があります。ぜひ、書店の語学書コーナーで単語集を比較し、ご自分にピッタリの1冊を見つけていただきたいです。
TOEIC のリーディング・セクションでは、文法力も必須となります。ですが、重箱の隅をつつくような、いじわるな文法問題は出ません。TOEIC 対策に直結しているわけではないですが、私が学生時代に1冊じっくり学んで「英文法って奥が深い!」と面白さを感じたのは、洋書の英文法書『English Grammar in Use』(ケンブリッジ大学出版局)でした。洋書でも心配ご無用!平易な英語で書かれていたので、英語が苦手な私にも取り組める内容でした。学校の授業では取りこぼしがちなポイントを学ぶことができます。世界中で愛されている英文法書だということは、社会人になってから知りました。

TOEICの効用

私自身はこれまで TOEIC のスコアアップだけを目標にした勉強はしたことがありません。ですが、TOEIC を受験するメリットは確かにあると思います。スコアは大いに発奮材料になります。

TOEIC で目標点を突破したとき、達成感を味わった方も多いのではないでしょうか。私も同様で、初めて TOEIC 900点を突破したときはすごく嬉しかったですし、「英語の勉強、もっとがんばろう」と思えました。対照的に、TOEIC 985点を取ったときは、「あと5点で990点だったのに!!」と思いきり悔しくなってしまいました。勉強を淡々と続けているだけでは、「嬉しい!」「悔しい!」と感情が揺さぶられることはなかなかありませんよね。ですが、テストは目に見えて「スコア」=「結果」が出るので、大いに刺激になります。

どうしても短期間で TOEIC スコアを伸ばしたい方へ

会社へのスコア提出などで、どうしても短期間で TOEIC を攻略しなければならない方もいらっしゃると思います。もし、そうした方に1冊だけおすすめの英語教材をお伝えするとすれば、TOEIC の公式問題集です。
日本には TOEIC 予想問題を作成できる、優れたネイティブ講師もいらっしゃいますが、公式問題集がレベルの適正度の観点からも、やはり一番おすすめです。私は公式問題集を問題形式に慣れるために活用しました。公式問題集をメインとして徹底活用し、その上で自分に合った問題集を絞り込んで使うのが、スコアアップの一番の早道だと思います。

また、TOEIC を熟知している英語のプロフェッショナルが発行するメールマガジンの購読も効果的です。TOEIC 対策という観点から一つに絞り込むとすれば、TOEIC 研究の第一人者、中村澄子さんのメルマガ「時間のないあなたに!即効TOEIC250点UP」(無料)がおすすめです。毎回 TOEIC を受験し続けているからこその説得力がある内容です。TOEIC の最新傾向が知りたい方、スキマ時間で TOEIC 対策をしたい方に特におすすめです。

TOEIC は情報処理戦

TOEIC を初めて受験した方は、大量のリスニング問題に次々に対処しなければいけないこと、さらに大量の語彙・文法・長文問題を次々に解いていかなくてはいけないことに、ビックリされたのではないでしょうか。私も学生時代に初めて受験したときは、大量の問題におののきました。ただし、社会人になってから受験してみたら、その感触は大きく変わりました。英語力が伸びたこともさることながら、おそらく情報処理能力が学生時代とは比べものにならないくらい伸びたからだと思います。

会社員として膨大な仕事量に対処していくなかで、学生時代の何倍もいろいろなことがテキパキできるようになったなあ・・・と実感されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ビジネスパーソンとしてつちかった情報処理能力は、TOEIC に対処する上でも役立つと感じています。

TOEIC 990点獲得は通過点

TOEIC 990点を取った方の多くが「TOEIC 990点獲得は、通過点に過ぎない」と実感されているのではないでしょうか。英検1級を取得したときにも感じたのですが、TOEIC 990点もいざ獲得すると、取ったからといって別に山頂に到達したわけではないと痛感するものだと思います。たとえると、自宅近所の丘に登って「ヤッター!」と喜んでいたら、海の向こうではエベレストがはるか高くにそびえているようなものです。私はかえって自分が「井の中の蛙」だったことを実感しました。

私は今でも「英語が得意だ」と思ったことがなく、「母語の日本語と比べると、なんて隔たりがあるんだろうか・・・」と、ため息が出るほどです。外国語は学べば学ぶほど、ますます奥深さを感じるもので、TOEIC 990点獲得は一里塚でしかないと思いました。TOEIC の先には、果てしないほどの「英語世界」が広がっています。その世界のほうに私は関心があります。

TOEIC は優れた試験ですが、あくまでも一団体が実施するテストです。基礎力をつけていく上では、TOEIC のスコアは便利な目安、そして発奮材料になります。ですが、ある段階を過ぎたら、TOEIC という限られた世界の勉強だけに埋没するのはもったいないと思うのです。その先に広がる世界にまで手を伸ばすことこそ、語学の醍醐味だと私は考えます。

せっかく頑張って英語を勉強するからには、TOEIC の先に広がる「英語世界」にも、ぜひ目を向けていただきたいです。
ページのトップに戻る
当ウェブサイトに掲載されている全ての文章・写真・イラストの無断使用・転載をお断りします。